経営を成功させるためには、戦略優位とそれを実現する組織の能力が必要です。組織が成長発展の方向性に向けて邁進するためには進むべき道、方向性を明確にする必要があります。
「病院の将来の状態」を表したものがビジョンです。
自院が解決すべき課題に気付き、その課題の本質を捉えるには、まず課題解決により医療機関として、また経営者として何を手に入れ、何を達成したいのかという方向性を明確にすることが必要となります。
組織の方向性が明確に提示されたら、次に現況を洗い出し、整理すること、つまり現在の足下をしっかり見ていくことが重要です。
自院が解決すべき課題に気付き、その課題の本質を捉えるには、まず課題解決により医療機関として、また経営者として何を手に入れ、何を達成したいのかという方向性を明確にすることが必要となります。
急速に変化している現代の経営環境において、その環境変化に対応するため、病院の内部環境をどのように変えなければならないかを明確に把握しなければなりません。また自院の弱みを外部環境の変化によって強みに変えることはできないかを検討するためには自組織の事業特性を分析しておかなければなりません。それを総合的に行う手法がSWOT分析です。
目標を達成するための意思決定のために、さまざまな要素をS(強み)・W(弱み)・O(機会)・T(脅威)の四つに分類しマトリクス表にまとめることで、問題点が整理され解決策を見つけやすくなるという戦略(計画)ツールであり、整理する過程で関係者が問題意識を共有化できる点がメリットの一つです。
まずはSWOT分析によって現状分析を行い、それをさらに優良組織の業務と比較し数値評価を行うことで判断に客観性をもたせ、職員に具体的な目標を与えることが必要となります。それをベンチマーキングといいます。
組織において最も効率的な技法/手法/プロセス/活動であるベストプラクティスを探し出して、自組織のやり方とのギャップを分析してそのギャップを埋めていくためにプロセス変革を進める、というこの経営管理手法がベンチマーキングなのです。
ベンチマーク分析は単なる数値の比較ではなく、その背景にある比較対象病院の技術レベルや施設の機能、組織の規模等も含め分析し、評価することが必要です。また、過去の自病院の実態との比較も経営管理に活用できます。他の医療機関との比較は情報入手が困難な面がありますが、自院内での比較であれば必要な指標を継続的に比較することにより、経営管理に役立たせることが可能となります。
使用する比較データは、自院と同規模の競合病院や全国の病院平均や黒字病院等比較可能な活動データであり、レーダーチャートやランキングデータ等で現します。
DPCを導入している病院では診療内容毎のベンチマークを行うことが可能となります。病院で実施される診療行為の一つひとつをデータに蓄積して、ベンチマーク分析ができるのです。同様の疾病で、同様の手術で、在院日数が同様の場合、それぞれの医師が得る診療報酬はほぼ同額であり、コストはその中でやりくりをすることとなるため、結果が同じ場合、一番コストがかからない手段をおこなった医師の手法に合わせることにより、コストの抑制ができることとなります。
医療におけるクリティカルパスは、アメリカにおいて、主に経済的なインセンティブにより普及してきた手法ですが、インフォームド・コンセントの充実による患者の安心の確保や、医療内容の明確化、標準化等による医療の質の向上などを目指すために極めて有効な手法です。
クリティカルパスでは、『期待される臨床上の目標(アウトカム)を達成するためにどのような医療を提供すればいいかを計画する』という考え方に基づき、目的を明確化し、対象(疾患や処置や症状など)を選定する必要があります。
■チーム医療の充実による医療の質の向上を目指すのか
■在院日数の短縮を図るのか
■コスト削減を行うのか
1. 医療の質の向上 2. 業務の効率化 3. 在院日数の短縮 4. 業務の明確化
5. チーム医療の強化 6. インフォームド・コンセントの充実
クリティカルパス作成にあたっては、対象とする疾患を選定し、それぞれの経過を把握し、どの部分をパスとして使用するかを決め、自施設の診療録の中からパスの対象となる症例の過去のデータを集めます。そしてそのデータをもとに標準値を設定するのです。データとしては20~30症例が必要だといわれています。また。医師だけでなく医療ケアに関わる全職種が参加する必要があります。
誰がいつどのような方法で 役割を果たしていくのかを明確にし、役割遂行の責任を与えることでスムーズに運用することができると考えられています。
クリティカルパスの基本的なフォーマットには大きく、「時間軸」「アウトカム(達成目標)」「タスク(項目)」の3つがあり、横を時間軸,縦を項目軸として、その他、「適用基準・除外基準」「病気分類」「DPCコード」などを設けるものもあります。
病院の経営概念の一つに、ポジショニングという考え方があり、市場において差別化などによる優位性を確立するために、顧客に対するサービスの位置づけを明確化することをいいます。ポジショニングが高ければ、患者の信頼度は高くなり、有益な情報が収集でき、優秀な人材が集まり、お金の流れはスムーズになり、利益率などにも多大な効果が生じます。ポジショニングは顧客の共感に基づいています。患者を満足させられるだけの高いポジショニングを取り、質の高いサービスを提供するため、自院の役割・機能を患者や住民、地域に伝える手法をマーケティングと言います。
患者はさまざまな情報をもとに、受診する医療機関を選びたいと考えています。しかし、十分な情報が得られておらず、家族・知人のクチコミ情報に頼っているのが現状であり、それらの情報は全て正しい認識・評価に基づくものとは限りません。
マーケティングを行っていくにあたっては、ポジショニングの他に、地域経済や人口構成を把握し、地域社会のニーズ調査・分析を行って、どのようなマーケティング・ミックスを選択すべきか考慮していく必要があります。マーケティング・ミックスはマーケターがターゲット市場から期待する反応を引き出すために用いるマーケティング・ツールの組合せであり、このとき、特に重要になってくるのが4C(顧客にとっての価値、顧客コスト、顧客の利便性、コミュニケーション)です。
自院を取り巻く環境として、診療圏の医療需要、医療・介護サービスの供給状況、制度環境について調査・分析を行います。
自院の特徴をみるためには、診療科別や主要疾病別の視点が重要であり、自院が患者に提供する医療機能や、病院が保有する内部経営資源について、評価分析を行うことが必要となります。
組織が競争優位性を構築するためには、事業の機能がどのようにして価値創造につながっているかの関連性を明らかにすることが重要となります。自組織の競争優位性を構築するのに寄与している部分はどこかを分析するためのフレームワークであり、業界の重要成功要因(KSF:Key Success Factor)の発見に有効なフレームワークとしてバリューチェーンがあります。
一つの商品、またはサービスに関し顧客にとっての“価値”が作り出される事業活動の連鎖(流れ)のことを指します。企業の競争優位の源泉を明らかにし、競争優位を確立するために企業の内部環境を分析するフレームワークとして提唱した概念です。
一般的な構造として事業の流れに沿って「購買物流」「製造」「出荷物流」「マーケティングと販売」「サービス」の5つの『主活動』と、これら主活動をサポートする「調達活動」「技術開発」「人的資源管理」「全般管理(財務、法務、情報サービスなど)」の4つの『支援活動』に区分します。
体系的なアプローチによって、診療プロセスを同定、解析するツールであり、一般的なバリューチェーンの始まりは、特定の病態や併発している病態を特定することから始まります。
まず、ある病態を持つ患者にケアサイクルを通して診療する場合の各種業務を表し、患者にとっての医療価値を向上する方法を解析します。そして、業務の構造からIPUの最適な組織体系が決まるのです。